2013年12月1日日曜日

152日目・1201・メルボルン~ノーマン・ビーチ 祝・オーストラリア大陸最南端到達


ここ1週間の行動軌跡はこんなかんじ。 
          

 メルボルンも用足しで、市内中走り回りました。

朝、なんて言うんだろ、昨日のインコみたいな鳥が来ました。
クリスの車のスペアタイヤの上に、ヒマワリの種が置いてあったので気にはなってたんですが、コレを食べに来るのね。とても珍しいそうです。
「これは昨日来たやつの親さ。」
「ずっと前からエサをあげてるから、この鳥は20歳を超えてる。6年半旅をしてココに帰ってきたら、次の日からまた来たんだ。私たちがいないか、毎日見ていたんだね。
とても人には慣れているから、かなり近づいても逃げないよ。私たちは何もしない事を知ってるんだね。」
「捕まえて飼うこともできるけど、それはしない。
動物は野生で生きているほうがいいと思うし、ゲージに入れて飼うことは好きじゃないんだ。」
「野生の動物は人間の気配があると、近づいては来ない。
ここは他の牧場に囲まれてフォレスト(山中)ではないけど、6年半人けがなかったから、帰ってきたときは動物園みたいになってたよ。」
「カンガルーや野鳥、ウォンバット、ほらあそこの木にはコアラが3頭住みついていたんだよ。」

「ヘビかい?今もいるよ。この建物の裏に住んでる。黒くってデカいやつがね。毒かい?持ってるよ。猛毒さ。
でも殺さないさ。捕まえない。ほら、あそこに小川が見えるだろ?彼はそこに来るマウスやラットを食べに来るだけさ。
私たちがなにかしなければ、彼からは何もして来ない。私たちが、彼はそこに住んでることを知っていればいい。ただそれだけさ。」

「私がここで車の下に潜って寝板の上で作業していた時、横を通った事もあったよ。(笑)」
インコと記念撮影。
場所を借りて、エアクリーナーの掃除と屋根の荷物のリパッキングをさせてもらいました。
私はいつも単独で走っていますし、シュノーケルがついてるので走っている環境の中では、エンジンは一番キレイな空気を吸っているはずですが、それでもエアクリーナーケースの中に砂ぼこりが溜まります。
ですから、隊列を組んでうしろを走るときや、シュノーケルが付いていない場合には、もっとホコリを吸うので、さらにマメな清掃やオイル管理は必須です。

スポンジのエアクリーナーは、水で洗えて、長距離旅行ではとても便利。部品代も高いし。
でも、現地の人は紙のやつでも洗って水切って使ってたけどね(笑)
ずっと屋根についてるハイリフトジャッキにも、細かい赤土のホコリはびっしりと付いています。
きのうジェリ缶を降ろしたので、空いたスペースに2段重ねだったエクストラタイヤを移動します。
この旅で経験した事のひとつには、スプリットリング・ホイールを使うなら自分でタイヤ交換出来るから、スペアを背中に1本背負っておけば、エクストラタイヤはチューブと、リムなしで屋根に載せとけばいい。ということ。
ゴム製の大径タイヤやチューブは重いんですが、スチールのリングホイールは本当に重いので、なおさらです。

パースでで買ったARBルーフラックの許容荷重は150kg。
私の場合はダーウィンで、店長の強いお薦めから安アルミホイールをチューブレスで組んでいましたが、それでもルーフラックにかかる負担は減ったはずです。

私の車の書類なんかを見せてごらん。というので、見てもらってるところ。
それで、いろいろなアドバイスをくれた。

「北米を旅した時、カナダでは車の保険がとても高かったんだ。だけど、国境を越えてUSAに行くと安いんだよ。
でもね、証書をよく読むと適用地域で【North America(北アメリカ)で】と書いてあるんだ。

だからね、北米を車で旅する時は、USAで保険に入るといいよ。」そんな話。
(コレは私の聞き違いもあるかもしれないので、行く人はちゃんと確認してね)



私は対物保険には入っています。対人の保険が切れてしまい入りたかったんだけど、結局メルボルンでは入れませんでした。

そんな事を話すと、私の書類をよく精査し、いくつか私に質問をしたうえで、「Yoshi、残念だけどこの保険は、事故が起きても支払われない。この加入証書はゴミになる。100%だ。」

私にはショックな話でした。
出来るならこの事も旅が終わるまで、知らずにいたかった。

「なぜかと言うと、この住所にあなたは住んでいないし、車もこの場所には保管されていないからだよ。」

「クリス、私は手続きする時、なんども適用されるか確認してから加入しましたよ。」

「保険会社も仕事だからね。売上げが必要だから、簡単に入れる。でもね、支払の担当者は受付の担当者とは違う事を言うよ。どこかに不備を見つけて、なるべく支払わないようにするんだ。」

私の概念では、保険は車に掛けるものなので、実際加入できたし登録住所なんかどこでもOKかと思ってたら、やっぱダメみたい。
このへんは日本の保険会社も同じですね。

または後日、別の方からのアドバイスでは、加入時に受け付け担当から念書を書いてもらっておくとか、会話を録音しておく。
などすると、裁判になった時、勝てる可能性が高いと聞きました。

でも、だいいち旅行中に裁判なんかしてる余裕はないでしょうし、そういう展開では旅どころではなくなってしまいます。

私が調べた範囲では、日本で入れる旅行保険では自動車事故での保障はありませんでした。
この事から、日本から車を持ちこんでオーストラリアを旅する人事実上での無保険車を乗り回す事になることを、理解した上で出発しなくてはいけません。

こういう事が明確になってくると、数ヶ月程度の旅行では、こういう保障やメンテナンス、リペアがついているレンタカーは、とても価値があると言えるでしょう。(一見すごく高く感じるんだけどね)

私の場合は多くの人から、「なぜ輸送コストやリスクを犯してまで日本から持ってきたのか?」と、これまた数え切れないほど聞かれました。
この辺もその理由はあって、また別に話します。


朝食のとき、私はノートを片手に「クリス、あなた方が通ってきた国を教えてください。」そう聞くと、「ええ?いますぐにかい!?たくさん行き過ぎて、すぐには答えられないよ~!」
それで、世界地図をなぞりながら「ココをこういうふうに通って、ココからこっちに行ってぇ。」と説明してくれてるところ。

今朝はクリス、エレインと私の3人。エレインは食事の後片付けとか洗濯とか、忙しそうに動き回っています。
例えば日本語でも、ちょっと話せば「ああ、この人ほとんど話せないんだな。」とか、すぐにわかるじゃないですか。それで、会話は尻すぼみになる。

でもね、クリスはそれでもしゃべり続けます(笑)
意見を求められると、私は単語力がないから会話が止まってなんとなく白けちゃう。
だから、相づち程度で話し続けてくれるクリスは、私にとっては心地よかった。

それでも、たまになに言ってるのかが理解出来る。
よくわかんないと「え?え?」と聞くと、私が理解出来る簡単な単語で言い換えてくれます。

彼は、旅したときの話をたくさん私に聞かせてくれました。
-30℃のロシアを渡ったときの話や、「シベリアでは氷が解けるとね、蚊やブヨがたくさん出るんだよ。エレインは背中を60ヶ所も刺さされてしまった。シベリアを渡るときは春か秋がいいよ。」
「ボリビアで標高5500mの峠を越えたとき、私は大丈夫だったんだけど、エレインが高山病になってしまったんだ。頭痛や、体調が悪くなって大変だったよ。」
「南米のコロンビアでね、海に近い川沿いの道をを走っていたんだ。土砂降りの雨でね。夕方、運悪くスタックしてしまった。
一生懸命に脱出しようとしたんだけど、ウインチを使っても出られなかった。暗くなってきちゃったし、その晩はスタックしたままビバークしたんだ。」
「車が傾いたままだから、ルーフテントも平らに出来なかった。
それで、私とエレインは、体をくの字にして小さくなって眠っていたんだよ。」
「そしたらね、夜中の一時ごろ、川の対岸に軍のトラックが来た。
兵士が4人降りてきて、荷台から大きな荷物を下ろしはじめたんだ。」
「土砂降りの中、真夜中だよ?
何が起きるのかと思って、私たちはテントの隙間からじっと見ていた。

そのうちに下流から小型ボートが来た。
そのボートに降ろした荷物を積み込むと、すぐに両方とも居なくなったんだ。」
「コレがどういうことかわかるかい?」
「・・・いえ、わかりません。」
「Yoshi、私たちはドラッグの取引現場を見てしまったんだよ。

アメリカのドラッグはコロンビアの北岸から船で積み出されるんだ。
もし見つかっていたら、私たちは撃ち殺されていただろうね。」

クリスはそういう話を、たくさん聞かせてくれました。
「Yoshi、次の旅に使う車は、TOYOTAのV8ディーゼルを積もうと思ってる。
グロー・タイマーをつけて、グロー時間をアジャスト出来るようにするんだ。
-30℃のロシアでは、数秒のグローではエンジンが掛からなかったからね。

このタイヤは太くてハマりにくいんだけど、1本$400もする。
だから次はクロスプライ・タイヤ(バイヤス)にして、リアは2軸の4輪だ。それにチューブを入れるんだ。
そうすればスタックはしにくい。

このビードストッパーは良かったよ。ソフトサンドで空気圧は一番低くした時は0.3kgだったからね。リムから外れちゃうんだよ。

私は気になっていた事を聞いてみました。

「クリス。あなたは何歳なんですか?」
「今年で59歳だよ。」

・・・・・!
ということは、彼らが世界一周の旅に出発したのは、今の私よりも上の年齢で。ということになります。

驚いたことに、その59歳の彼は、もう次の旅の準備を始めてるんです。
もっとココに居たいんですが、私はもう出発しなくてはいけません。

出発するとき、エレインが今朝焼いたパンと、グレープフルーツを持たせてくれました。
まだ暖かいです。外側は石みたいにカチカチなんですが、中はしっとりモチモチ。

とても美味しくってこのあと、ひとりで走りながらなのでバターなんかはつけられなかったんですが、チギリながら一日で全部食べてしまいました。

噛めばかむほどに甘く味が出て、水だけで美味しく食べられる。

以前誰かに、「日本にあるのは菓子パンだけだよ。本当のパンは日本には存在しない。」そう聞いた事がありますが、本当のパンというのはこういうやつなのかもしれません。

私はこれまでにも、たくさんの方々と出会い、その影響を受けてきました。


とりわけ、このクリストファーとエレインとの出会いは、私にとって衝撃的でした。


「クリス、エレイン、私は若かったころオーストラリアで、自分の限界にチャレンジした。それで、負けたんだ。
私は、経験も、知識も、装備も不足していたんだ。そして私は、自分を鍛えて、勉強して、またやってきた。
その時に作ったタスク(課題)やホーム・ワーク(宿題)を、今回はすべてステージ・クリアしたよ。」

「自分の限界にチャレンジするこういうスタイルの旅は、たとえコンプリート(完了)しても、ミスゲーム(失敗)しても、もう今回で終わりだ。そう思って日本を出発して来たんだ。」


「次の旅からは、ホテルに泊まり、カクテルを飲んで、免税品店で土産を買って、バスや飛行機での優雅な旅をしようと考えていた。楽だしね。今みたいに汚い格好で苦労する事もない。」


「日本ではね、年を取ると、目立たなく、小さくまとまる事が良しとされているんだ。
実際、日本人は48歳の私の年齢では、一人でアウトバックや砂漠に入って行くような旅は、決してしない。
でも、ここでは違うね。髪が白いオールド・ガイが真っ赤なコルベットをドライブしているし、オールド・カップルがアウトバックの旅行を楽しんでる。」


「今回も障害を乗り越えて、なかば強引に出発したのは、私にはアウトバックを一人で旅するのには、もう体力的なタイムリミットが来ている。そう考えたからなんだ。」



「クリス、エレイン。でもね、あなた達と出会って、話を聞いて、
いま私は考えが変わったよ。・・・・・どうもありがとう。」



私はクリスとは、立っている土俵が違うので、同じ事は出来ないかもしれません。


けれども、これからも歳を重ねて、いくつになっても肝心なところは変わらない自分でありたい。と、そう思いますし、こういうのを私は、自分らしい生き方であると考えます。


クリスとビクター。カッコいいですね。


クリストファーとエレインが、自分たちで作った車で世界を旅したときのブログ
AdventureBug


結局、私が3ヶ月まえに彼から聞いた信じられない話は、すべて真実でした。

私はちょうどこの頃、アウトバックでの課題を全て終え、
念願だったキャニング・ストックルートも単独無補給制覇をし、

「遭難の話はたくさん聞いてるけど、成功したのは何人も居ないはずだよな。
おれは、ちょっとはスゴイのかもしれない。」なんて勘違いをしていたんですが、
そんなのはすぐに、どこかに吹っ飛んでしまいました(爆笑)

世界には、ニッポンの小市民である私の常識からはほど遠い、
こういうスケールの大きな人たちがたくさんいます。






旅に戻ります。

牧場の未舗装路から舗装路に出るところ。
このあとの旅で砂塵をあげながら未舗装路を走ることは、もうたぶんないでしょう。かなり淋しい。

メルボルンでの残念だった事は、この町にいるはずの(Otto)オトに再会出来なかった事。
彼はキャニング・ストックルートで、ただひとり出会ったトラベラーでした。
私は、本物のアウトバッカーの旅話が聞きたくって、家に帰ったらぜひメールを下さい。とお願いして、私の連絡先が書いてある名刺のようなパーソナルカードを渡したんですが、結局彼からの連絡はなかった。
私は彼の連絡先を聞かなかったので、私からの”突撃となりの晩ごはん作戦”が出来なかった。

ここでの反省は、”普通のオージーはめんどくさがり屋”という事を重要視していなかったこと(笑)
または、旅の途中でカードを無くしちゃった。とかそういう展開だったのかもしれません。
旅人というのは、自分のために旅をするのであるから、ほかの誰かにその内容を話す必要がない。
だから誰かと群れることもないし、メディアにも出ない。
彼はそういうタイプなのだろうし、じつは私もそうです。
なので、例えばTV画面の中でひとり旅しているような人は、私は旅人とは呼ばない。
もちろん否定はしないんですが、私はそんなふうに考えます。
私としても、こういう自分の旅の内容というごく個人的な事は、普通はごく限られた気のおけない人にだけに話すんですが、こういう形で詳細にWEBにアップするには、自分としての理由と目的はあって、その辺はこのブログのしめくくりで話そうと思います。
クリスに、「ウイスキー・ベイがキレイだから、ココまで来たのなら行かなきゃいけないよ。」
彼は、must to go、 (~行かなければならない)を使ったので、よほどお勧めなのでしょう。
このまま北上しようと思ってたんですが、そういう訳で南下します。
でもね、途中でナビや地図を見ても、それらしい地名は見つけられなかった。
それで、行き着いたところ、ココがオーストラリア大陸最南端のノーマン・ビーチ。
スケールが広すぎて、私のカメラではコマ切れでしか撮れません(笑)
本当の最南端は、ココから歩いて片道15km。
二日間コース。
・・・なので私はあっさり諦めます(爆笑)



ここにもキャラバンパークはあるんですが、私は一人だしトイレ以外は車で完結できるので、今夜もまた駐車場に泊まります。
野宿生活が長いので、キャンプ場は窮屈だし、高いお金を払うのもムダだと考えるようになってしまいました。
駐車場は焚き火が出来ないんだけどね。

夕暮れまでのんびりと過ごして、明日からはまた、とんでもない所まで北上します。




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